今回は見慣れない用語が多いので先に解説しておきます。
マグマが冷えて固まった岩石を火成岩という。含まれる鉱物の種類や結晶の状況により分類され、それぞれ名前がついている。例えば、花崗岩(かこうがん)は石材としてよく使われているのでご存知と思う。
表題のトーナル岩は花崗岩に近い火成岩である。完晶質(結晶の集まり)で有色鉱物が少なく、白っぽいゴマシオ模様である。桃色がかかったカリ長石を含むことが多い花崗岩とは明らかに異なる。
石英閃緑岩(せきえいせんりょくがん)もよく似ており、同じ岩石として扱われている場合もある。丹沢のものは石英が少なく有色鉱物がほぼ角閃石なので、トーナル岩とされている。ここでもそうしておく。ちなみに丹沢のトーナル岩は日本地質学会で「神奈川県の石」に指定されている。
さて、国土地理院の地質図を見ると、丹沢山地の地質は同心円状に分布しており、その中心部はトーナル岩・石英閃緑岩となっている。周囲は全山火山噴出物由来の岩石だ。
この地質図を見てこの石を手に取って見てみたいと思った。
しかし、相当な山奥である。それではということで考えたのが相模川だ。地質図を見るとトーナル岩地帯を浸食している支流を集めているため、河原を探せばあるだろうと思ったのである。予想通り、津久井湖下流の新小倉橋付近の河原には、様々な石に混じって白いゴマシオ石が転がっていた。
河原の石としては白い感じを受けるが、割った新鮮な面は少し黒っぽい。画像の白い部分は斜長石(白濁)と石英(半透明)の結晶である。黒い角閃石は陽光でキラリと光り、緑色に見える。平らに割れる黒雲母とは劈開面の感じが違う。
もうお分かりと思うが、私はこのトーナル岩をかつての「丹沢火山島」の芯の部分ではないかと思ったのである。そびえる超古代の火山を想像するのは楽しい。ところが調べると最近の定説は違っていた。それについては別項で。