植物(花)や岩石鉱物など大地に根差した自然のものは何でも好きです。また人為であっても古いものには興味があります。東京都と神奈川県の境界ぐらいの郊外都市に在住。周辺の市街地と多摩丘陵を中心として、近場に残された自然を探検しています。時々丹沢山地、相模川流域、三浦半島などにも足を延ばしています。

ギョリュウバイ・レッドダマスク

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 令和になった日は、予報が外れて朝から暖かい晴れになった。GWだしどこかに行こうということで、家内と横浜市の「イングリッシュ・ガーデン」に行ってきた。咲き乱れるバラで有名なところだが、まだ少し早いようで人出も少ない。しかしかえってバラ以外の「舶来」の花々をじっくり堪能できた。いつもは外国原産であっても日本に溶け込んだ「街の花」を取り上げているが、今日は番外編だ。

 画像は、ギョリュウバイ[(木扁に聖)柳梅]という1-2mの小低木である。意味ありげな和名がついているが、オーストラリアやニュージーランド原産で、柳も梅も関係ない。ユーカリの仲間である。マオリ語で「マヌカ」。そういえばマヌカ・ハニーなら聞いたことがある。「レッドダマスク」はおそらく品種名だが、こちらの名前の方が似つかわしい響きだ。

 木は小さく、花もごく小さい。しかし、接写すると画像のようになって目がチカチカするくらい派出である。「イングリッシュ・ガーデン」は、こんな個性の強い花がぎっしり詰め込まれているが、不思議に調和がとれている「秘密の花園」だ。おすすめである。

 

ホタルカズラ

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 ムラサキ科である。ムラサキという名の植物はあるが、ワスレナグサの仲間と言った方が良い。昨日の雨の雫が陽を浴びて光っている。

 夜のイメージというか陰のある名前だ。確かに青紫色の花が夜を思わせる。白い模様を蛍の光にたとえ、横に這う茎をツル(カズラ)と見たものだろう。別名ルリソウ(瑠璃草)。花の色は時と共に濃くなるそうだ。

 元々日本の山地などで自生。絶滅危惧種とのこと。やや大きくて(直径1.5cmぐらい)草むらの中でも目立つ花である。場所は住宅地の中の小高い尾根道で、地の雑木林が残っているところだ。しかしちょっと場違いな感じがする。ご近所の愛好家が取ってきて植えたものかもしれない。

ムサシノキスゲ

 

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 昨年いただいたコメントに、高原のキスゲ群落のすばらしさの話があった。それ以来、黄金(きん)色のユリにあこがれていた。いろいろ調べたところ、近場(ちかば)にムサシノキスゲという種類のユリの自生地があり、今咲いていることが分かった。本日行ってきたので紹介する。

 場所は府中市の都立浅間山(せんげんやま)公園である。武蔵野台地の真ん中にある80メートルぐらいの高さの丘陵地だ。全体にかつての武蔵野の雑木林の植生を残している。そして、遊歩道が整備され、林床のササなどはきれいに刈られていた。

 ということは、よく手入れされた里山と同じだ。当然キンランギンランは…花盛りであった。あんなに咲いているのは初めて見た。まったく、嬉しいかぎりだ…(興奮)。

 さて、気を取り直してキスゲである。草丈は50センチメートルもないが、花は思ったより大きい。頂上付近の明るい雑木林の下草の中に点々と咲いていた。画像のように少しオレンジがかった上品な黄色、キンランとほぼ同じ色、である。花の形はスッキリとして類縁のノカンゾウと似ている。ニッコウキスゲは朝花開くと夕方にはしぼんでしまう一日花だが、これは翌日まで 保つ両日花だ。

 ムサシノキスゲは、冷涼な高原に生息するニッコウキスゲが低地に適応した変種とされる。昔は武蔵野全体に生育していたが、里山の開発と荒廃のため現在はこの場所のみだそうだ。都のHPでは「日本で唯一の自生地」などと出ていたが、そうしてしまったことがなんか悲しい。大事にしなくては。

クゲヌマラン

 

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 そろそろ里山は私の好きなキンランギンラン(金蘭、銀蘭)のシーズンである。以前、近場で希少種のギンランを探し回ったが見つけられず、あきらめた帰路、とある駅前団地の一角で見つけた話を書いた。

 今年はどうかとその場所に行ってみた。うれしいことに数が増えており、咲きそろっていた。相変わらず楚々とした佇まいだ。さっそくデジカメで撮って自宅で詳細に観察した。

 先ず、よく似たササバギンランとの区別である。ギンランは、(1)花序(花が房のようになっている部分)の下にある小さな葉(苞)が短い… フムフム、確かに花序の下に小さい葉がついている。(2)花の下の突き出した部分(距、きょ)が短い… あれ!距がないぞ?花を横から見ると距が下に突き出しておらず角張って見えない。よく見るとその部分はすこし膨らんで色も微妙に違っている。以下比較のため、昨年撮ったギンランの花を示す。

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 いろいろ検索してみると、どうやらこの花は「クゲヌマラン」という種類らしい。二次大戦前に藤沢市鵠沼(くげぬま)海岸(当時は結核の療養地として有名)で発見されたものとのこと。他にも、可能性としてギンランの花型の変種(ペロリア)があり、ヨーロッパ原産の近縁種も入ってきているそうだ。ワカラン。素人としてはここまでだ。

 そういえば、花の時期がギンランより早い。キンランギンランは林の中の薄暗いところを好むが、このランは日なたに生えている。すぐ近くに並木のケヤキが生えているが腐葉土などはない。共生に必要なラン菌が上手くついているのかな…。共生から光合成に戻っているのか…。また謎が増えてしまった。

博物誌と皇帝ティトゥス

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 以前、「博物誌」を著したプリニウスと同時代の、皇帝ヴェスパシアヌス(在位AD(西暦)69-79年)のコインを紹介した。

 プリニウスヴェスパシアヌスの下で「博物誌」37巻を完成したが、皇帝はAD79年に亡くなっている。そのため、長男の皇帝ティトゥス(在位79-81)に奉呈された。

 

 プリニウスヴェスパシアヌスと同じ79年に亡くなった。有名なベスビオス山の大噴火によりポンペイが埋まった年である。その時プリニウスは帝国の艦隊司令であり、ポンペイに救援に駆けつけて噴火に巻き込まれたものとされる。しかし、ヤマザキマリとり・みきさんのコミック「プリニウス」では、避難すれば助かったのに火山の噴火という大スペクタクルに対する好奇心に抗しきれず残った、という説だ。私もそう思う。

 

 画像のコインは皇帝ティトゥスのデナリウス銀貨である。当然だが、その肖像は父親とそっくりでずっと若い。実際、40歳代でなくなっており、在位はAD79-81年の23か月でしかない。彼は副帝として父を助け、皇帝としてはポンペイの被災者救済などに尽力し、誠実に公務を行ったことが記録されている。コミック「プリニウス」の最新刊(8巻)にも少し顔を見せている。

 

 このコインが作られたのはAD80年である。古代ローマコインの外周の文字(本物のローマ字!)は裏側にもあり、その描かれた皇帝の業績等に基づく称号の略号が列記されている。そのため文字を読み解くと製造年まで特定できるのである。ヨーロッパでは専門の学者もいる。ちなみに、ローマの代表的遺跡コロセウムは、ヴェスパシアヌスの時代に建築が開始されたが、完成したのはティトゥスAD80年である。

 

ニリンソウ

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 昨年多摩丘陵ニリンソウらしき植物の群落を見つけた。神社の裏の林縁で咲き誇っていた。その時はカメラを持っていなかったため、今年こそは撮影をと思って行ってみたところ無くなっていた。草刈りがされたらしい。私有地だからしょうがないが、残念だ。

 ところがその直後、たまたま行った芹が谷公園(町田市)の一角で見つけた。他の草に埋もれて、ポツンとここだけ。

 一本の茎から二輪ずつ咲くのでニリンソウ二輪草)というが、よく似たイチリンソウもある。花の数は当てにならない。葉の切れ込みが浅いこと、葉が輪生であること、および白い模様が入っていることからニリンソウで間違いないと思う。

 キンポウゲ科で、例によって花びらに見えるのはガク片である。そのため独特の質感を持った花だ。林の縁の薄暗いところで咲くので、淡い光を発しているように見える。

 花の後地上部は枯れて消えてしまう。スプリングエフェメラル(春の儚いもの)の代表である。そんなに珍しいものではないそうだが、自生地(里山)は減る一方である。草刈りの方、見つけたらそっとしておいてください。すぐ消えますから。

 

ガマズミの花

  

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 かしの木山の雑木林の一角にあった樹高2,3メートルの低木。レンプクソウ科(?スイカズラ科としているものもある)とのこと。白くて小さい地味な花だ。その代り秋には赤い粒々の食べられる実がなる。

 奇妙な名前の由来はいろんな説があるようだが、どれもピンとこない。少なくともカエルが住んでいるわけでも、植物のガマ(蒲)に似ているわけでもないらしい。

 接写すると丸っこい花弁に雄シベがアンテナのように伸びており、パラボラのようで意外と未来的だ。さらに丸いつぼみが取り巻いていてこれも宇宙ステーションみたいだ。なんか楽しい。

 これからの新緑の季節に白い花は何とも爽やかだ。さらに紅葉も美しいらしいがよく知らない。この木は覚えたから、秋にもう一度見に来よう。